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京都地方裁判所 昭和37年(ワ)627号 判決

原告(八三〇号事件原告、六二七号事件被告) 辻喜三

右訴訟代理人弁護士 前田外茂雄

被告(八三〇号事件被告、六二七号事件原告) 井口義雄

右訴訟代理人弁護士 山田正一

主文

被告は、原告が別紙目録第二(ロ)記載の仮登記の本登記手続をすることを承認せよ。

被告の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

原告主張の(一)の事実、(二)の事実中原告が代物弁済予約に因る所有権移転請求権保全仮登記を受けた事実、(六)の事実は、当事者間に争ない。

≪証拠省略≫によれば、原告主張の(二)、(三)の事実を認めうる。

ところで、本件のように、甲が、乙に対する金三〇〇、〇〇〇円の貸金(A債権)について、乙所有の不動産に対し代物弁済予約を締結して、右代物弁済予約に因る所有権移転請求権保全仮登記を受け、A債権の弁済期徒過後、甲が、乙に対し、新規に金六〇〇、〇〇〇円を貸付ける(B債権)と同時に、右合計金九〇〇、〇〇〇円の貸金(AB債権)について定めた弁済期日に、乙がAB債務不履行のとき、甲が当然AB債権の代物弁済として右不動産の所有権を取得する旨の停止条件付代物弁済契約を締結し、右停止条件が成就した場合、後順位の担保権者その他登記上利害の関係を有する第三者が存在するときも、甲は、前記仮登記の本登記を受け、前記仮登記の順位保全の効力を受けうるものと解するのを相当とする(ただし、A債権についての当初の代物弁済予約が無効であるときは、格別であるが、本件においては、その主張もないし、その事実を認めるに足る証拠もない)。

けだし、右の場合、当初の代物弁済予約に、債権者に不利益な約定を附加したにすぎないものと解されるし、仮登記の順位保全の効力を与えても、登記上利害の関係を有する第三者の正当に期待しうる利益を侵害することもないからである。

したがつて、被告は登記上利害の関係を有する第三者として、原告が前記仮登記の本登記手続をなすについて、承諾する義務がある。

よつて、原告の本訴請求は、正当としてこれを認容し、被告の請求は、失当としてこれを棄却し、民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 小西勝)

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